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東京地方裁判所 昭和61年(ワ)12470号 判決 1988年1月29日

原告(甲・乙事件)

増田恵津子

被告(甲事件)

坂本豊隆

ほか一名

被告(乙事件)

坂本隆哉

主文

(甲事件)

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

(乙事件)

一 被告坂本隆哉は、原告に対し、三三八万一五四〇円及び内三〇八万一五四〇円に対する昭和六〇年二月二六日から、内三〇万円に対する昭和六二年四月一五日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二 原告のその余の請求を棄却する。

三 訴訟費用はこれを二分し、その一を原告のその余を被告の各負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告

1  被告坂本豊隆(以下「被告豊隆」という。)、同坂本芙美子(以下「被告芙美子」という。)は、各自、原告に対し一五五三万二〇七四円及び内一四五三万二〇七四円に対する昭和六〇年二月二六日から、内一〇〇万円に対する昭和六〇年一〇月一七日から各支払ずみまでいずれも年五分の割合による金員を支払え。

2  被告坂本隆哉(以下「被告隆哉」という。)は、原告に対し六四二万円及び内六〇〇万円に対する昭和六〇年二月二六日から、内四二万円に対する昭和六二年四月一五日から各支払ずみまでいずれも年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  仮執行宣言

二  被告ら

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

昭和六〇年二月二五日午後四時ころ、東京都足立区梅田一丁目一一番先横断歩道(以下「本件横断歩道」という)において、被告隆哉の運転する足踏式自転車(以下「本件自転車」という)が原告に衝突した(以下「本件事故」という)。

2  責任原因

(一) 被告隆哉

被告隆哉は、本件自転車を運転して本件横断歩道を走行するに際し、前方不注視のため横断中の原告に気付かず本件事故を発生させたものであるから民法七〇九条により、原告に生じた損害を賠償すべき責任がある。

(二) 被告豊隆、同芙美子

右被告らは、被告隆哉の両親であり、本件事故当時満一四歳(中学二年生)で責任無能力者であつた同被告の共同親権者として日常行動を的確に把握しこれを監督すべき義務を負つていたのに、変速ギア付き高級スポーツ自転車を買い与え、乗り回させておきながら、交差点や横断歩道等における安全運転や、幼児、老人等弱者への配慮に関する指導、監督が十分でなく、そのために、同被告が本件のごとき軽率な運転操作を行つたものであるから、同法七一四条一項に基づき、仮に然らずとしても同法七〇九条(同被告に責任能力があるとした場合)に基づき原告の損害を賠償すべき責任がある。

3  原告の受傷内容と治療経過

原告は、本件事故により第三腰椎骨折、両下腿、左大腿及び左腹部挫傷の傷害を負い、増田接骨医院及び加藤整形外科に約一年四か月にわたる通院治療を余儀なくされ、脊椎(腰椎部)分離症の後遺障害を残した。

4  損害

(一) 治療費 五八万一五四〇円

昭和六〇年二月二七日から昭和六一年六月一二日までの加藤整形外科における治療費

(二) 後遺障害による逸失利益

原告の前記後遺障害の程度は、自動車損害賠償保障法施行令二条別表掲示の後遺障害等級一一級の七に該当し、その労働能力喪失率は二〇パーセントであるところ、本件事故当時の右による逸失利益の現価を昭和六〇年度女子賃金センサスの全年齢平均月額(一七万六〇〇〇円)に基づき、中間利息控除につき新ホフマン方式を採用して算定すれば、次式のとおり八四五万〇五三四円となる。

17万6000円×12月×20.006×0.2=845万0534円

(三) 傷害慰藉料 二五〇万円

原告は、前記傷害のためギブスで腰部を固定して絶対安静を命じられ、一か月余の休学の後、昭和六〇年四月から通学を再開したが、コルセツトを付けたままであつたため、授業を満足に受けられないのはもちろん、通学さえ苦痛のため思うにまかせなかつた。また、掃除などできないため友達のいじめを受けた、更に、私立中学をめざし四谷大塚進学教室に通いトツプクラスの成績をあげていたのに、本件事故のため勉強ができなくなり、受験に失敗するという無念に追いやられてしまつた。右の苦痛を慰藉するには二五〇万円をもつてするのが相当である。

(四) 後遺障害慰藉料 三〇〇万円

原告は前記後遺障害を残しており、そのため腰痛のほか二〇~三〇分程度の立位、座位によつてでさえ下肢のしびれを生じる等の障害に悩まされている。また、原告の脊椎分離症は第三、第四腰椎の骨折によるものであり、将来脊椎すべり症を誘発する可能性が大きく、妊娠、出産に多大の困難をきたすおそれがある。これらによる精神的苦痛を慰藉するには三〇〇万円をもつてするのが相当である。

(五) 弁護士費用 一〇〇万円

被告らが本件事故につき任意に賠償責任を果たさないため、原告は甲、乙事件の提訴、追行を原告訴訟代理人に委任するのやむなきに至り、甲事件につき一〇〇万円、乙事件につき四二万円の報酬を支払う旨約束し、右相当の損害を被つた。

5  よつて、原告は、被告豊隆、同芙美子各自に対し一五五三万二〇七四円及び内一四五三万二〇七四円に対する本件事故の日の後である昭和六〇年二月二六日から、内一〇〇万円に対する甲事件訴状送達の日の翌日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の、被告隆哉に対し前記損害金の一部である六四二万円及び内六〇〇万円に対する本件事故の日の後である昭和六〇年二月二六日から、内四二万円に対する乙事件訴状送達の日の翌日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める。

二  請求原因に対する被告らの認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2は、(一)の被告隆哉の過失、(二)の被告豊隆、同芙美子の責任を争う。被告隆哉は本件事故当時満一四歳で責任無能力者ではないから民法七一四条一項の主張は失当であり、また、七〇九条の主張もそのような注意義務違反はなく、失当である。

3  同3は、本件事故による第三腰椎骨折の事実は争う。仮に、右骨折が生じたとしても後遺障害はない。

4  同4の主張はすべて争う。ただし、原告が治療費として五八万一五四〇円を支払つたことは認める。もつとも、診療内容に照らし不当に高額であり、その全額を本件事故と相当因果関係のあるものとみることは許されない。診断書代も八通分は因果関係がない。また、慰藉料の主張も受傷の内容・程度、治療内容、通院日数(六四日)に照らし不当に高額である上、原告は甲事件提訴前被告豊隆所有不動産及び同被告の給与債権に対し仮差押をしているところ、右被保全債権の大部分は後遺障害による逸失利益と慰藉料とから成る損害賠償請求権であつて、同被告に右損害賠償責任がないこと前記認否反論のとおりである上、この点を置いても、原告に右のような損害が発生していないことは主治医の加藤善久医師の診断を受ける過程で容易に認識し得たはずであるから、被告ら家族が前記仮差押により長期にわたり不当かつ甚大な経済的圧迫を被つていることに照らすと、高額治療費の点(減額がされないのであれば)も含め右の間の事情は正義・公平の見地から慰藉料算定に当たつて十分考慮されなければならない。

5  同5の主張は争う。

三  被告らの主張(過失相殺)

仮に、被告隆哉に過失があつたとしても、原告にも前方左右の注視を怠つて飛び出した過失があるというべきであるから、少なくとも五割の過失相殺を行うべきである。

四 過失相殺の主張に対する原告の認否

被告らの過失相殺の主張は争う。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  請求原因1(事故の発生)の事実は当事者間に争いがなく、右争いのない事実に成立に争いのない甲一号証、乙一号証の一ないし六、弁論の全趣旨により成立を認める甲一二号証、本件事故現場付近の道路状況の写真であることに争いのない甲一三号証の一ないし五、一四号証の一ないし四、乙五号証、原告(後記措信しない部分を除く)及び被告坂本隆哉の各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告は本件事故当時小学校四年生で満一〇歳の女児、被告は中学校二年生で満一四歳の男子であつたこと、本件横断歩道は八千代商店街から日光街道への出口に位置し、同街道西側歩道の一部であり、同横断歩道は同街道に設けられた横断歩道とL字型に接し一体となつていること、本件横断歩道の北側角(足立区梅田二丁目一七番一号)は店舗建物及び各種の自動販売機が置かれ、日光街道西側歩道の本件横断歩道より北側部分(以下「西側歩道」という)と八千代商店街との互いの見通しは極めて悪く、このため西側歩道上には右角付近に自転車に対する一時停止の道路標示が設けられていること、本件横断歩道には自転車の往来が頻繁にみられること、被告は本件自転車に乗り時速二〇キロメートル弱程度の速度で西側歩道を南下し本件横断歩道に差し掛かつたが一時停止その他の安全確認を一切行うことなくそのまま同歩道に乗り入れたところ、ほぼその瞬間に原告と衝突し転倒させたこと、原告は、日光街道東側歩道上に級友を認め、折から同街道の横断歩道の歩行者用信号が青色を示していたことから横断すべく小走りで右横断歩道に向おうとしたところで本件事故に遭遇したもので、いわば出合頭の衝突事故であつたこと、被告豊隆、同芙美子は同隆哉の両親であり、親権者であることの各事実が認められ、原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

二  そこで、被告らの責任の有無を判断するのに、本件事故が被告隆哉の前方不注視ないし安全確認義務懈怠及び速度の出し過ぎの過失によるものであることは前記認定事実から明らかであり、同被告は本件事故により原告が被つた損害を賠償すべき責任があるというべきである。

ところで、原告は、被告隆哉の両親である同豊隆及び同芙美子に対しても民法七一四条一項又は同法七〇九条に基づき損害賠償責任を追及するのであるが、まず、同隆哉の年齢、身分は前記認定のとおりであり、同被告本人尋問の結果と合わせ考察すると、同被告は本件事故当時事理の弁別能力に欠けるところはなかつたものと推認され、右推認を覆すに足りる特段の事情は認められないのであるから、同被告に責任能力がないことを前提とする原告の同法七一四条一項に基づく主張は理由がなく失当というべきである。

次に、親権者である親が責任能力を有する未成年の子の惹起した不法行為につき民法七〇九条に基づき固有の不法行為責任を問われる場合があり得ることは原告の指摘するとおりである。しかし、それは子が責任能力を有する以上、特段の事情のない限り、子の当該不法行為ないし過失が同年代の子に通常みられるような形態のものとは異なるものであつて、かつ、かかる不法行為の発生が右親の子に対する指導監督ないし教育義務の懈怠の発露と認められる場合に限られるものと解する(したがつて、通常の過失の場合には原則として右責任は生じない)のが相当というべきである。そこで検討するのに、本件事故における被告隆哉の過失態様は前記認定のとおりであり、決して軽微なものではないが、同年代の子らに往々にして生じる突発的なものであつて、通常の範ちゆうから外れた特異なものとは認め難い上、関係証拠を精査するも本件自転車の様式、購入の経緯、自転車搭乗における一般的注意等において、被告豊隆、同芙美子に同隆哉の前記過失の発生を助長したと認めるに足りる特段の事情も見い出し難い。すると、被告豊隆、同芙美子には、本件事故につき固有の不法行為責任を負うべき事由は認め難く、この点に関する原告の主張もまた理由がなく、失当といわざるを得ないものである。

右のとおりであるから、甲事件の原告の請求はその余について判断するまでもなく理由がなく、失当というべきである。

三  次に、原告の受傷の内容、程度について判断する。

前記認定の本件事故の態様に成立に争いのない甲二ないし七、九ないし一一号証、乙二号証、原告の腰椎部等のレントゲン写真であることに争いのない同三号証の一ないし二九、四号証の一ないし三、証人加藤善久の証言、原告(後記措信しない部分を除く)及び被告坂本隆哉各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告は本件事故により第三腰椎骨折、両下腿挫傷、左大腿及び下腹部挫傷の傷害を負い、主として加藤整形外科で治療を受けたところ、骨折以外の受傷は皮下出血、圧痛を伴う程度のいわゆる打撲傷であり、受傷から二ないし五週間で治癒したのに対し、骨折は第三腰椎の椎弓部(背部側)の断裂であり、事故直後は座位、前屈状態で腰部に痛みを伴うものであつたため、右骨折部の癒合のため昭和六〇年二月二八日から同年四月一一日まで脊椎ギプス(石膏コルセツト)で腰部を固定し、同月一七日から同年五月二三日までは硬性コルセツトを、同月二四日から同年一〇月二四日までは胸部までの深い軟性コルセツトを、同月二五日から昭和六一年二月一八日までは腰部のみの三〇センチメートル程度の浅い軟性コルセツトをそれぞれ当てて経過を看たが(治療内容としては当初鎮痛剤を投与したほかは何もなく、ギプス、コルセツト着用のみである)、結局癒合を得られず、右同日当初の骨折状態のまますなわち脊椎分離症を残して症状固定の診断を受けたこと、右固定時、医師の圧診により痛みを訴えるものの、原告から主治医に対し格別の自覚症状の訴えはなく、その後原告は医師の治療を受けることもなく今日に至つていること、医学上の一般知見として脊椎分離症は一般人の五ないし一〇パーセント程度にみられ、特に治療を施さないからといつて悪化する可能性が認められるわけではなく(右罹患者の半数程度は具体的症状の出ないまま日常生活を送つている。また、一流のスポーツ選手の二、三割程度が右疾病に罹患しながらスポーツ活動を続けている)、一般人が日常生活を送る上で支障は乏しく、格別緊急の危険があるものではないこと、原告の場合肥満(身長一五〇センチメートルそこそこで体重六〇キログラム程度)が認められる現在においても、医学的見地から日常生活に格別の支障は認められず、今後も腹筋等の筋力強化や肥満の解消を図れば一般人と同様にスポーツ等肉体活動を含めて通常の日常生活を送ることが十分可能であり、女性という特殊性を考慮しても、将来の就職、結婚、出産に格別の支障は認められないこと、なお、脊椎分離症は一般論として脊椎すべり症を発症する可能性があるが、右可能性の程度について一般的な医学的知見は得られておらず、見解によつては分離症患者の三パーセント程度とされ、また、右発症には様々な条件が作用し、その発症機序について必ずしも医学的な分析及びこれに基づく知見が確立しているものではないこと、以上の事実が認められ、原告本人尋問の結果中右認定に反する部分はその余の前掲各証拠に照らし措信し難く、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

四  進んで損害について判断する。

1  治療費 五八万一五四〇円

原告が加藤整形外科に対し本件事故による受傷のため治療費として五八万一五四〇円を支払い、右相当の損害を被つたことは当事者間に争いがない。

被告らは、右治療費が受傷内容、程度に徴し不当に高額であると反論するが、本件事故の態様、前掲甲二、三号証、証人加藤善久の証言等を検討しても、治療の必要性、方法、期間、治療費単価等について特に不当と認めるべき点も見い出し難く、右反論は当たらない。なお、診断書代九通分四万五〇〇〇円については、通常より多数にすぎる感もないではないが、弁論の全趣旨により成立を認める甲一五号証、原告本人尋問の結果によれば、原告は多数回にわたる休学、早退等を余儀なくされており、前記認定の治療経過に鑑み、これを不当とみなすことは困難というべきところ、かかる場合に診断書の提出を必要とすることは経験則に照らし十分肯認し得るところであるから、右に要した費用も本件事故による損害と認めることに格別不合理はないものというべきである。

2  逸失利益 〇円

前記認定事実によれば、原告は本件事故により脊椎分離症の後遺障害を残しているが、これにより将来の就労への支障を認めるに足りる具体的事情は見い出し難いから、後遺障害による労働能力の減少に基づく将来の逸失利益を請求する点は理由がなく、失当といわざるを得ない。

3  慰藉料 二五〇万円

前記認定の本件事故の態様(後に説示するとおり、本件に過失相殺を適用するのは妥当を欠くが、原告においてもいま少しの注意を払つていれば本件事故を回避することができたのも明らかなところであり、慰藉料算定に当たつてはこの点を考慮するのが相当というべきである)、原告の年齢、受傷の内容、程度、治療の経過及び期間(一年四か月の間に六五日間)、前掲甲一五号証、原告本人尋問の結果によれば、この間一か月半ばかりの休学を含め、長期の早退を余儀なくされたほか、勉学その他学校生活を送る上で様々の不自由や精神的苦痛を被つたこと(ただし、私立中学の受験失敗を本件事故によるものと認めるに足りる証拠はない)、医学上日常生活に支障はないとはいえ、今日なお時として腰部に痛みを生じ、患部に異和感を覚え、かかる状態に加え脊椎分離症を抱いて将来を迎えること自体の原告の精神的不安を無視することはできないこと、本件事故後の被告らの原告に対する応対を含めた本件審理の経緯(ただし、被告隆哉は前記医療費金額を負担するものであるところ、右は原告に十分な治療機会を与えたものと評価することができるから、この点は慰藉料額算定に当たつて考慮すべきものと考える)、弁論の全趣旨により認められる被告豊隆の給与債権に対する仮差押の経緯その他本件審理に顕れた一切の事情を総合考慮すれば、本件事故により原告が被つた精神的苦痛に対する慰藉料は二五〇万円と認めるのが相当である。

4  弁護士費用 三〇万円

本件事案の難易度、審理の経緯、認容額等を考慮し、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当額は三〇万円と認めるのが相当である。

5  過失相殺

本件事故発生の態様は前記認定のとおりであるところ、被告隆哉の過失は、かなりの速度で全く見通しのきかない所から一時停止の道路標示を無視していきなり横断歩道上へ飛び出し原告に衝突したというものであつて、本件事故発生場所の道路状況に照らすとき、本件のごとき事故防止の観点から最も基本的かつ重要な注意義務に違背するものというべきである。そうである以上、原告においていま少し左右の安全を確認していれば本件事故を避けられたといえなくはないにしても、法規範的見地からは、これを過失相殺事由とするのは相当ではなく、慰藉料算定上の一事由にとどめるべきものというべきである。

よつて、被告隆哉の過失相殺の主張は理由がなく、採用の限りではない。

五  よつて、原告の請求は、乙事件につき被告隆哉に対し三三八万一五四〇円及び内三〇八万一五四〇円に対する本件事故発生の日の後である昭和六〇年二月二六日から、内三〇万円に対する右事件訴状送達の日の翌日である昭和六二年四月一五日から各支払ずみまで民法所定年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容するが、同被告に対するその余の請求並びに甲事件の請求はすべて理由がないから失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を適用し、仮執行の宣言はその必要がないものと認め右申立てを却下することとして、主文のとおり判決する。

(裁判官 藤村啓)

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